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表面偏析物の化学組成と分布状態がわかります

一般に、高分子材料には様々な添加剤が配合されていますが、製造条件、保管条件によって添加剤は材料表面に移行、偏析することがあります。添加剤の表面偏析は曇りや変色だけでなく、周辺部材への移行により接点不良などの原因になる場合があります。このようなトラブルの原因を解明するためには、材料の表面分析を行ない添加剤成分の有無を調べる必要があります。表1に各種表面分析法の特徴をまとめました。各種表面分析法のうち、TOF-SIMSは化学構造を決定できる点、感度、空間分解能が高い点、分析深さが浅い点で、ESCA、FT-IR-ATRより優れています。また、マッピング測定により元素のみならず分子イメージング像も得られ、分布状態の解析に有効です。

表1 各種表面分析法の特徴

EVAフィルムの表面分析

以下に、フィルム表面に偏析した添加剤をTOF-SIMSで分析した事例を紹介します。エチレン・ビニルアセテート共重合体(EVA)フィルムにブロッキングが発生したため、TOF-SIMSで表面を分析したところ、正2次イオン質量スペクトル〔図1〕にm/z 338が検出され、フィルム最表面にエルカ酸アミドが偏析していることが分かりました。このことから、滑剤としてフィルムに含まれていたエルカ酸アミドが保管中に表面偏析してブロッキングを引き起こしたと推定されました。さらに、m/z 338のイメージング像〔図2〕により、エルカ酸アミドはEVA最表面に不均一に分布していることが明らかとなりました。

1 EVAフィルム表面の正2次イオン質量スペクトル
図2 エルカ酸アミド(m/z 338)のイメージング像

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