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高速加熱測定を用いたシミュレーションが可能です

入力補償型DSCは、試料ホルダーの熱容量が非常に小さいために、加熱/冷却速度ともに750℃/minでの制御が可能です。高速加熱/冷却測定は高感度測定であり、製造時におけるシミュレーションがDSCセル内で可能となります。高感度測定において、DSCの出力である熱流(単位時間における入力エネルギー量の差:Heat Flow)は、加熱/冷却速度と試料量と試料の比熱容量の積になります(Q=m・Cp・dT/dt)。つまり、加熱/冷却速度を大きくすればDSCシグナルはそれに比例して出力されます。ここでは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を高速加熱測定することで再組織化を抑制する事例を紹介します。

分析事例:PETの再組織化(再結晶化)抑制測定

ポリエチレンテレフタレート(PET) 0.5mgを加熱速度10℃/min、50℃/min、100℃/min、200℃/min、300℃/minでDSC測定した結果です。加熱速度が速くなるにつれて融解ピーク温度が低温側にシフトしています。低速測定では、加熱速度よりも結晶の再組織化速度の方が早いため、再組織化が進み高融点化したことが考えられます。一方、高速測定では、加熱速度よりも結晶の再組織化速度の方が遅いため、再組織化が抑制された融解ピークが観測されたと考察されます。
なお、試料量が0.5mgと僅かな場合、10℃/minではDSCシグナルは小さな出力となりますが、加熱速度が速くなるにつれてDSCシグナルも大きく出力されることから、高速測定では少ない試料量でも高感度測定を実現します。

図 ポリエチレンテレフタレート(PET)のDSC測定結果 
 (試料量:0.5mg、加熱速度:10℃/min、50℃/min、100℃/min、200℃/min、300℃/min)

プラスチックは、生産プロセスにおいて加熱/冷却速度が異なると、製品の特性も変化してしまうことから、材料特性を評価する1つのアプローチとして、生産プロセスを疑似した条件で評価することが有効です。また、研究開発においても、低速から高速での測定が可能な入力補償型DSCを用いることで、さまざまな条件下でのシミュレーションが可能になります。

対象試料

  • 高分子材料
  • 金属材料

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