ポリイミドの詳細組成がわかります
ポリイミド(PI)は、その優れた耐熱性や機械・電気特性などから、電子材料をはじめ様々な分野で利用されており、その組成は近年ますます多様化・複雑化してきています。このような中、特性をより良く理解するために、詳細な組成解析が望まれていますが、PIの持つ耐熱性や耐溶剤性により分析手法が限定され、これまで組成を定量的に評価することは困難でした。この度、化学分解条件を最適化することにより、PIをそのモノマー単位であるカルボン酸成分とアミン成分に定量的に分解することで、PIの共重合組成比を含めた詳細組成解析が可能となりました。
多元共重合PIの組成解析
ピロメリット酸無水物(PMDA),3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA),1,4-ジアミノベンゼン(PPD),4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DPE)からなる4元共重合PI[共重合比 PMDA:BPDA:PPD:DPE = 1:1:1:1(mol)]の化学分解物の1H NMR測定結果を図1に示します。その結果、ピロメリット酸(PM),3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸(BP),PPD,DPEに由来するピークが検出され、ピーク積分強度比よりその共重合組成比は、配合通りの結果が得られました。このように、本手法を用いることで、多元共重合PIの詳細組成解析が可能です。
多層PIの組成解析
A層,B層の2層で構成されたPIフィルム[図2]の各層の化学分解物の1H NMR測定結果を図3に示します。A層は3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA) と1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)からなるPI、B層はピロメリット酸無水物(PMDA)と4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DPE)からなるPIであることが明らかとなりました。このように、多層ポリイミドフィルムの各層の詳細組成解析も可能です。