多変量解析法のイメージングIRへの応用
イメージングIRを用いた多成分系試料の評価において、対象試料の組成が類似している場合、吸収バンドの重なりあいが多く、各組成の分布状態を可視化することは困難な場合が多いです。多変量解析を用いて、構成成分の情報を抽出すると、微妙な組成の差異を可視化できます。ここでは、2種類のアクリル酸エステル系成分を構成材料とする粘着剤についての評価事例を紹介します。
2種のアクリル酸エステル系粘着剤積層品の評価
2種類のアクリル酸エステル系粘着剤積層品(構成:A成分/B成分/A成分)について、イメージングIR測定を実施し、エステル結合(1730cm-1付近)由来のバンドを用いてイメージング像を構築した結果を図1に示します。サンプル中央部および端部の赤外スペクトルは類似している〔図1(右)〕ため、各成分の分布状態を可視化することは困難であることがわかります。そこで、多変量解析を用いて各構成成分のスペクトルと各成分の濃度に関する情報を抽出し、それを用いて画像を再構築した結果を図2に示します。多変量解析の結果を元に得られたイメージング画像において、試料は2種類の成分で3層構成となっていることが明確になりました。また、多変量解析により、各成分の僅かな違いを強調したかたちで、それぞれのスペクトルが抽出されていることがわかります〔図2(右)〕。このように、多変量解析を用いると、通常の測定では判別しにくい、微妙な差異に関する情報を抽出することが可能です。