耐候性材料中の微量添加剤の定性および定量ができます
高分子材料にはその耐久性を保つために,添加剤が配合されておりポリマーの劣化防止や高機能化がなされています。特に過酷な自然環境で使用されるポリマー材料には、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や紫外線吸収剤(UVA)・酸化防止剤がよく用いられ、最近では少量かつ複数成分使用されることが多くなっています。ここでは耐候性テープに含まれている添加剤に注目し、LC/MS,LC/MS/MSで添加剤を分析した事例について紹介します。
耐候性テープの添加剤分析
耐候性テープ中の光安定剤・紫外線吸収剤・酸化防止剤に着目し、LC/MSで分析した結果を図1に示します。その結果、試料からピーク①~⑦が認められ、その分子量が①Mw355,②Mw369,③Mw480,④Mw494,⑤Mw323,⑥Mw508,⑦Mw1177と判明しました。さらに、図2に示すLC/MS/MS測定を行うことにより、生成したプロダクトイオン(図2中の赤色の数値)から分子の情報が得られ、以下のように①~⑦の化学構造がわかりました。
ピーク①と②:光安定剤③と⑥の変性物と推測(各々の片末端メチルエステル化物)
ピーク③:ヒンダードアミン系光安定剤(図3-1参照)
ピーク④:光安定剤③または⑥の変性物と推測(図3-1参照)
ピーク⑤:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(図3-2参照)
ピーク⑥:ヒンダードアミン(ジ-N-メチル)系光安定剤(図3-1参照)
ピーク⑦:ジ-tert-ブチル-フェノール型酸化防止剤




また、定性された添加剤はLC/MS/MS測定の一つである多重反応モニタリング(Multiple Reaction Monitoring,MRM)法 を用いて定量します。MRMは選択性が高い検出方法であり、UVやELSDでは検出できないppt~ppbオーダーの高感度定量が可能です。このように材料中の微量添加剤および、それらの変性物を定性・定量することは、機能性材料の配合設計を行う際の参考となります。
その他の応用事例
- 各種微量添加剤の定量
- ポリマーの硬化触媒分析
- 医薬品不純物・分解物の構造解析