極薄膜中の有機成分の深さ方向分布を調べることができます
高分子フィルムの表面には、様々な機能(帯電防止性、防汚性、軽剥離性、易接着性等)を付与するために、表面処理が施されています。表面処理層の有機組成や厚み方向での成分分布を評価することは、製品設計や故障解析において非常に重要ですが、処理層の厚みは100nm以下と薄い場合が多く、従来は詳細な分析が困難でした。このような処理層について、アルゴンガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)を用いた飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)のデプスプロファイル測定によって、精密な深さ方向分析が可能となりました。
ここでは、透過電子顕微鏡(TEM)にて2層の表面処理層(厚みは2層合せて70~80nm)が観察された有機フィルム〔図1〕について、深さ方向での成分分布を評価した事例をご紹介します。
有機フィルム表面処理層の深さ方向分析
Ar-GCIB法を用いたTOF-SIMSデプスプロファイル〔図2〕から、基材上に組成が異なる2層の有機層が存在することが確認されました。各層の質量スペクトル〔図3〕から、第1層はアクリル系樹脂、第2層はアンモニウム系成分(帯電防止層と推察)、基材はポリエチレンテレフタレート(PET)であることがわかりました。また、添加剤と考えられるアミン系成分が、試料表面および、第1層/第2層界面に偏在していることも確認されました〔図2〕。このように、組成未知の有機薄膜について、各層の組成および添加剤等の組成分布を評価することが可能です。
その他の応用
- 有機ELなどの多層薄膜における、各層の有機組成分析や、添加剤などの分布評価
- 各種高分子材料における、外部からの染み込み成分の深さ方向分布評価