フッ素系高分子の構造が詳細にわかります~高次構造解析~
フッ素系高分子は耐熱性や耐薬品性、耐候性などに優れ、絶縁性、低摩擦性、低粘着性といった特性を有する材料です。しかし、フッ素系高分子は溶媒に溶解しにくいものが多く、融点も高いため、その組成や構造を評価する手法は限られます。固体核磁気共鳴装置(固体NMR)は材料をそのままの状態で測定でき、また、分子の化学構造を詳細に解析できるため、有効な手段となります。ここでは、代表的なフッ素系高分子の一つであるポリビニリデンフルオライド(PVDF)を例に、固体NMRによる構造解析について説明します。
分析事例:ポリビニリデンフルオライド(PVDF)の構造解析
PVDFは-(CF2-CH2)-の繰返しユニットを有する半結晶性の高分子材料です。この固体19F NMRスペクトル〔図1〕からは、結晶系の異なる2種類の結晶相(α型,β型)、非晶相(a)および異種結合(*)のCF2基に由来するピークが検出されます。結晶化度や異種結合の量は耐薬品性や機械強度に影響を与えることが知られていますが、各ピークの面積比率を求めることで、それらの量が同時にわかります〔表1〕。このように、固体NMRは材料そのままの状態で、結合の状態や立体構造の違いを識別することが可能です。
その他の応用
- フッ素系共重合ポリマーのモノマー組成比解析
- 電子線やγ線照射によるフッ素系高分子の劣化,架橋構造解析