表面・界面の劣化評価ができます
ポリカーボネート(PC)樹脂は自動車のヘッドライトなど多くの工業製品に用いられますが、紫外線や熱で劣化しやすいという弱点を持ち合わせています。個々の分析手法では十分に解明できなかったPCの表面・界面で発生する剥離やクラックなどの現象を表面組成、表面物性の評価技術を組み合わせることで解析できるようになりました。ここでは、PCと接着剤との接着性が低下する現象を複合的に解析した事例をご紹介します。
ポリカーボネートの表面劣化挙動解析
接着性が低下したPCを精密斜め切削法(SAICAS)を駆使して試料調製し〔図1〕、赤外分光分析(FT-IR)とナノインデンターを用いて組成と物性の両面から調べました。FT-IRスペクトルより、表面近傍に劣化成分由来のエステル基、ケト基、カルボキシル基が確認されました〔図2左〕。また、ナノインデンターでの機械的特性の変化から、表面は内部に比べて硬くて脆いことがわかりました。これらの結果から、表面近傍に上記官能基が生成することで自由度の低い分子構造が生成して硬くなっていると考えられました。一方、芳香族に対するエステル基とケト基の吸光度比やせん断破壊強度より、劣化している深さは3μm程度であることが判明しました〔図2,図3〕。このように複合的に解析することで、製造前の材料確認や不具合発生時の原因究明に役立ちます。
その他の応用
- 熱硬化性材料、光反応性材料の硬化度評価
対象試料
- 高分子材料、多層膜