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極表面領域における弾性率の深さ依存性がわかります

高分子の接着や多機能化において、表面改質は重要な要素技術です。表面改質の効果を評価するために、表面エネルギー測定やESCA測定などが行われています。これらは濡れ性や官能基の導入効果を調べるには有効ですが、改質された表面層の機械物性変化はわかりません。特に低温プラズマ処理で改質された表面は、処理層が極表面領域に限定されるため、機械物性評価は困難とされてきました。しかしながら、近年の装置面および理論面の発展により、AFMを用いて極表面領域の弾性率評価も可能となってきました。ここでは、表面改質前後の高分子極表面領域の弾性率値の深さ依存性を調べた事例を紹介します。

プラズマ処理ポリスチレン表面の弾性率深さ依存性分析

試料はスピンコート法にて調製したポリスチレン膜です。弾性率算出にはフォースカーブ測定から得られるフォースディスタンスカーブをDMT理論式を用いて、押し込み深さに対応した弾性率を算出しました(上式)。未処理のポリスチレンでは、押し込み深さ1nmから5nmまでは徐々に弾性率値の上昇が認められ、5nm以深で一定の弾性率値に収束しています。それに対して、プラズマ処理ポリスチレンでは、未処理ポリスチレンほど押し込み深さに対して弾性率値の上昇は認められず、わずかに上昇している程度です。これは、プラズマ処理により表面から数nm深さまでは官能基導入や分子鎖切断が生じ、表面近傍の弾性率値が低下していることを示唆しています。接着に寄与する因子として、濡れ性や官能基導入の効果だけではなく、弾性率値の低下による熱運動性の上昇も考慮する必要があることを示していると考えられます。

図1 ポリスチレン膜表面近傍の弾性率深さ依存性

その他の応用

  • 液中環境下での弾性率深さ分析、種々表面改質の機械物性評価

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