合成高分子の組成をHPLCで調べます
合成高分子の組成分析では、構成するモノマー単位の種類とその平均含有量を核磁気共鳴装置(NMR)で分析します。合成高分子では配合するモノマーの反応性や重合に用いる溶媒などにより、共重合組成の分子量依存性や分子鎖毎の共重合組成の分布(組成分布)が存在し、この分布が最終製品の特性に大きな影響を与えることがあります。組成分布の評価には、分子量には依存せず、共重合組成のみに依存した分離が必要であり、化合物の極性の違いで分離が可能な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が広く利用されています。ここでは、アクリルポリマーを例に合成高分子の組成をHPLCで分析する事例を紹介します。
HPLC法での分子量依存性と極性依存性の確認
組成分布の評価においては、HPLC測定において分子量に依存しない分離が必要です。分子量の異なるポリアクリル酸ブチル(pBA)のHPLC測定を行った結果、分子量が1万以上であれば分子量に依存せず分離できることが確認できました〔図1〕。また、アクリルポリマーの側鎖の炭素数が異なるポリマーの分離を行い、側鎖長(極性)順に分離されることを確認しました〔図2〕。これらのことから、単一条件で幅広い合成高分子の組成分布評価が可能であることが確認されました。
重合条件の異なるアクリルポリマーの組成分布比較
水酸基やカルボキシル基を有する極性アクリルモノマーは非極性溶媒中の方が反応性が高いことが知られています。このような極性モノマーと非極性モノマーを重合する場合、溶媒の極性によってモノマーの反応性の差が異なるため、選択する溶媒によって組成分布(分子鎖毎の組成の違い)が異なる場合があります。極性モノマーと非極性モノマーのアクリル2元共重合体を非極性溶媒中と極性溶媒中で重合し、それらの組成分布をHPLCで比較しました結果〔図3〕、非極性溶媒で重合した2元共重合体の方がHPLCクロマトグラムが幅広く、組成分布が大きい共重合体が生成したことが確認されました。