高分子の表面転移温度がわかります
高分子表面はバルクと異なる物性になっていると言われています。また、環境や熱履歴の影響も敏感に受けると考えられ、高分子表面がどのような物性であるのかを知ることは、接着などの機能発現を理解する上で、非常に重要です。今回は、高分子の表面物性を評価する手法として、走査プローブ顕微鏡の摩擦力顕微鏡モードを用いた温度スウィープ測定にて、表面転移温度を調べた事例を紹介します。
ポリスチレンの熱処理における表面転移温度の影響
図1に温度スウィープ測定の測定原理を示します。摩擦力顕微鏡のスキャンの行きと帰りの差分を各温度にて読み取り、転移点にて摩擦力が上昇する現象を捉えます。試料はシリコンウエハ上にスピンコートしたポリスチレン(平均分子量:190k)の薄膜です(膜厚約100nm)。スピンコート直後(橙色)の温度スウィープ測定では、転移温度が約82℃と見積もられました。上記転移温度は表面Tgと考えられます。同サンプルを真空下、200℃にて30分間熱処理を行い、徐冷したサンプルでは、転移温度が約110℃と見積もられ、スピンコート直後の試料に比べて、転移温度が大きく上昇していることがわかりました。上記結果はTg以上で熱処理することにより、表面再配向が生じたためと考えられます。このように、摩擦力顕微鏡モードを用いた温度スウィープ測定では、表面転移温度を評価することが可能です。


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