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高分子材料の内部構造観察が可能です

高分子材料は、その成型加工性の良さに加え分子設計や加工法の工夫により、さまざまな機能が付与できることから、多くの分野で使用されています。その中でも、ゴム製品は絶縁体や接着剤をはじめとした工業材料、タイヤなどの一般向け材料として幅広く使用されています。ゴム製品の多くはゴム成分以外に種々の添加剤が配合されており、それらの分散状態を制御することは、高性能化のために重要です。ここでは、ゴムの内部構造をTEM観察した事例を紹介します。

ゴムの断面のTEM観察

ゴム材料は、主成分として軽元素で構成されている高分子材料を用いているため、TEM観察では明瞭なコントラストが得られにくい材料です。このような材料には、重金属染色を行うことでコントラストを増大することが可能です。図1に、ABR(アクリルブタジエンゴム)の他に複数の素材で構成されているゴム材料を凍結超薄切片法にて薄膜試料を作製し、TEM観察した結果を示します。ミクロンオーダーの球状ドメインとサブミクロンの粒状物が認められますが、球状ドメインとマトリクスのどちらがゴム成分であるのかは、この時点では判別できません。次に、この薄膜試料に重金属染色処理を施した後にTEMにて観察したものを図2に示します。重金属染色を施すことでマトリクスが暗く、球状ドメインが明るく観察されています。今回用いた重金属染色剤は、ABRに選択的に染色されることから、マトリクスがABR rich相であることがわかりました。さらに、上記マトリクス内部にはミクロ相分離構造が認められました。このように重金属染色処理を施すことにより、組成分布がサブミクロンレベルまで明瞭に可視化され、各種成分の分散状態の評価を行うことが可能です。

図1 ゴムの断面TEM像(重金属染色処理前)
図2 ゴムの断面TEM像(重金属染色処理後)

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