サステナブルな社会に貢献するリチウムイオン電池の特性・劣化解析
脱化石燃料として注目されているリチウムイオン電池は、大気中の酸素・二酸化炭素・水分などの影響を受けやすく、サンプリングから測定まで大気非暴露下で行う必要があります。このような試料に対して、グローブボックスおよびトランスファーベッセルを用いることで、大気の影響を抑え、材料本来の状態を評価することが可能です。
リチウムイオン電池 負極表面のESCAおよびTOF-SIMS分析
未使用品と充放電サイクル試験後の負極(グラファイト)について、大気非暴露下でESCAとTOF-SIMS分析を行いました。図1~3に示すように、ESCA分析の結果から、試験後の負極表面にはグラファイトやバインダー成分の他に、炭酸リチウムなどのカーボネート系成分や、各種リチウム成分を含む被膜(SEI:Solid Electrolyte Interface)が存在することが確認されました。また、TOF-SIMS分析では各成分の詳細な化学構造を調べることが可能であり、図4に示すように、負極表面において炭酸リチウムやリン酸成分などが不均一に存在していることがわかりました。このように、電極の表面組成を調べることは電池特性評価や劣化解析において極めて重要です。
ESCA: X線光電子分光法(別名XPS)
TOF-SIMS: 飛行時間型二次イオン質量分析法