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環境にやさしい水系インク印刷フィルムの分析

商品を魅力的に見せるため、注意事項を明確に伝えるためなど、パッケージやフィルムへの印刷は欠かせません。従来、印刷にはVOC(トルエン、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物)を使用した有機溶剤系インクが使用されてきました。しかし、乾燥工程で気化したVOCは回収,燃焼処理され、水とCO2に分解されて大気に放出されるなどの問題があります。近年、VOCを含まない水系インクを用いた印刷が、地球環境に配慮した技術として注目されています。環境に配慮した製品であっても、求められる性能を維持することは必須条件です。
ここでは、有機溶剤系インク、水系インクで印刷したフィルムにおいて、印刷に求められるインク密着強度に着目した分析事例を紹介します。

有機溶剤系インクと水系インクの密着強度の評価

有機溶剤系インクと水系インクで印刷されたフィルムの断面構造をSEMを用いて確認しました〔図1,2〕。有機溶剤系インク印刷では、基材の上に顔料を含むインク層が形成されていました。一方、水系インク印刷では、基材とインク層の間に下塗り層と推察される層が確認されました。

断面SEM像

図1 有機溶剤系インク印刷フィルム
図2 水系インク印刷フィルム

印刷では、インクとの密着性が課題となる場合があるため、密着力の指標となる剥離強度を表面・界面切削装置(SAICAS)を用いて算出しました。具体的には、基材側表面から斜めに切削を行い、有機溶剤系インク印刷では基材とインク層の界面、水系インク印刷では下塗り層とインク層の界面に達した際に水平切削へと切り替えて水平荷重を測定しています。切削後の光学顕微鏡像より有機溶媒系インク印刷では基材が、水系インク印刷では下塗り層が破壊されていたことから、基材の凝集力よりも強い力でインクが密着していると考えられました。なお、剥離強度は水系インクでは1.53 kN/m、有機溶剤系インクでは0.81 kN/mであり、水系インクの方が剥離強度が大きいことから、より密着性の高い製品が作られていることが判明しました〔図3,4〕 。

このように、環境に配慮された新製品においても、必要とする性能を明確に分析・評価することが可能です。

SAICASによる剥離強度測定 

図3 有機溶剤系インク印刷フィルム
図4 水系インク印刷フィルム

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