廃油中の元素分析が可能です
資源の有効活用、環境保全、産業廃棄物の埋立処分限界などの問題から、産業廃棄物リサイクルの必要性が高まっています。例えば、廃油は自家燃料や工業用潤滑油としてそのまま再利用する以外にも、再生重油や再生潤滑油にリサイクルされています。しかし、塩素系潤滑剤や硫黄を多く含む廃油は有害性、腐食性物質の発生原因になるため、リサイクルには向いておらず、事前に含有成分を確認することは重要です。ここでは、塩素や水分をはじめ、エンジンオイルに含まれる成分を定性・定量した事例を紹介します。
使用前後のエンジンオイルに含まれる元素量、水分量およびイオンの定性分析
使用前後のエンジンオイルに含まれる元素および水分量を、燃焼イオンクロマトグラフィー(燃焼IC)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、カールフィッシャー(KF)水分計を用いて調べた結果を表1に示します。その結果、使用後のエンジンオイルは使用前に比べて、金属(Al、Cr、Fe、Cd)や水分がわずかに増加したことが確認されました。
本手法は、精度良く定量評価可能であるため、組成情報を得るだけでなく、品質確認やコンタミ確認にも有効です。
また、使用前後のエンジンオイル中のイオン成分をICで測定した結果、使用後にいくつかのピークが検出されました。一例として図2中のピーク1をIC/MSで定性した結果を図3に示します。分子イオンおよびフラグメントイオンの情報からリン酸ジブチルが含まれていることが推定され、使用前には検出されていなかったことから、劣化により生成した可能性が示唆されました。このように、当社のIC/MSでは精密質量を取得できるため、得られた分子量情報から組成式を推定することが可能です。
その他の応用
- 劣化樹脂中の無機イオンの定性・定量分析
- メッキ液や環境水中の無機イオン、有機酸の定性・定量分析