試料最表面の官能基分布情報がわかります
試料表面の組成は表面特性(剥離性、濡れ性、電気抵抗など)に大きく影響します。ESCA分析は試料表面近傍の元素比率を評価する手法として用いられ、その分布情報を知りたいというニーズに対し、元素マッピング分析を使用できます。今回、試料表面の官能基分布を元素マッピング分析によって明らかにした事例を紹介します。
コロナ処理時の異物影響評価
オレフィン系ポリマー表面の親水化のため、コロナ処理による極性官能基(水酸基など)の導入を実施したところ、処理後のポリマー表面に異物が確認されました〔図1〕。異物による水酸基導入への影響を評価するべく、異物除去後のポリマー表面〔図2〕に存在する水酸基をフッ素(F)系試薬で修飾し、試薬由来のFについてESCAマッピング分析を実施しました。分析の結果、異物が付着していた箇所aは箇所bと比較してF検出強度が低いことが明らかになりました〔図3〕。次いで、箇所a、箇所bに対し、元素比率分析を実施すると、F元素比率が箇所aの方が低いことから、異物がポリマー表面に対するコロナ処理を阻害していることが示唆されました〔表1〕。
以上のことから、本手法を用いることで着目元素の検出強度のマッピングが可能となり、箇所ごとの元素比率や結合状態の把握ができるようになります。
その他の応用
- 表面変質、改質の分布評価
- 金属表面の局所酸化評価など