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フッ素系高分子の構造が詳細にわかります~劣化・架橋構造解析~

代表的なフッ素系高分子であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、化学的に安定で耐薬品性に優れた材料の一つです。しかし、耐放射線性が低いため、放射線照射による分解反応がおこりやすく、また、照射条件によっては架橋反応も進行することが知られています。このことから、接着や滅菌、あるいはグラフト重合のために放射線を照射した後、機械強度など特性に影響を与えるような化学構造変化が生じていないか、確認することがあります。ここでは、固体19F NMRを用いて放射線照射後のPTFEの化学構造変化を調べた事例についてご紹介します。

放射線照射によるPTFEの劣化・架橋構造解析

図1に放射線照射後のPTFEの固体19F NMRスペクトルを示します。PTFEはテトラフルオロエチレンユニット-(CF2-CF2)- が多数結合したものであり、通常、上段のスペクトルのようにδ=-122ppmに1本のピークが検出されます。下段のスペクトルは上段のスペクトルの縦軸を拡大したものですが、放射線を照射すると、小さなピークが複数検出されるようになります。図にはそれぞれのピークの帰属を示していますが、分子鎖の切断による末端基(-CF3:δ=-82ppm)の生成や、分岐構造(-CF2-CF(CF3)-CF2-:δ=-72,-113,-185ppm)が生じていることが確認されました。さらに、δ=-108ppmに架橋構造に由来するピークも検出されました。ピーク面積比率から、テトラフルオロエチレンユニット1000個に対し、1個の割合で架橋構造が形成されていることがわかりました。固体19F NMRはこのようなわずかな構造変化でも、感度良く検出できます。

図1 放射線照射後PTFEの固体19F NMRスペクトル

その他の応用

  • フッ素系高分子中の結晶成分、非晶成分、異種結合量などの高次構造解析
  • フッ素系共重合体中の微量モノマー成分の特定、含有量測定

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