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色鉛筆の発色性差の要因調査

色鉛筆は同系統の色であっても、発色性が異なる種類があります。今回、2種類の色鉛筆A(高価,発色性が高い:濃い)とB(安価,発色性が低い:薄い)について、芯の組成と物性の観点から発色性の違いを分析した事例を紹介します。

組成および物性から見た色鉛筆芯の複合分析

色鉛筆芯を粉砕〔図1〕し、FT-IR測定を行って組成差を調べました〔図2〕。その結果、色鉛筆AとBとでは検出ピークが異なっていることからその成分配合が大きく異なっていることが示唆されました。また、色鉛筆Aは色鉛筆Bと比べ、展色剤※1や有機顔料※2由来のピーク強度(1800~1200cm-1)が体質顔料※3(カオリン等)由来ピーク(1200~800cm-1)に対して大きいことがわかりました。このことから、色鉛筆Aは発色に関わる成分を多く含有していると考えられました。次に色鉛筆芯の断面を作製し、ナノインデンテーション測定にて硬さおよび弾性率を算出しました〔図3〕 。その結果、色鉛筆Aは色鉛筆Bと比べ、硬さは半分程度、弾性率は1/4程度でした。以上の結果より、色鉛筆Aは色鉛筆Bと比べ、発色に関わる成分(展色剤や有機顔料)が多く、柔らかい性質のため、同じ筆圧でも発色成分が紙へ転写しやすいことが高い発色性を実現していると考えられました。
このように、発色性という1つの課題に対して、複数視点で分析評価を行うことで、正確な情報を多く得ることができ、製品開発を深くスピーディーに進めることができます。

図1 色鉛筆芯の粉砕形状および塗布面の外観写真
図2  色鉛筆芯のFT-IR測定結果
図3  色鉛筆芯のナノインデンター測定結果

※1:顔料を分散・付着させる媒体となる成分
※2:着色目的で使用される、有機化合物からなる顔料
※3:着色力を持たない、増量や光学的性質の改善などを目的として配合される顔料

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