製品の機能発現部位を可視化します
高分子材料は主にC,H,O,Nなどの軽元素で構成されているため、そのままでは殆ど電子線が散乱せず試料を透過してしまい、実際の形態を観察することができません。故に、高分子材料の多くは試料本来の形態を可視化するために、特定の成分に選択的に重金属を作用させる染色処理が必要となります。重金属と反応した箇所は電子線が散乱され、TEM観察下では強いコントラストとなります。その結果、試料本来の構造を反映したTEM像を得ることが可能となります。この重金属染色処理は、観察目的によって染色剤や処理条件が大きく異なります。当社では高分子材料の豊富な分析経験をもとに、目的に応じた染色処理を施し、TEM観察を行うことができます。
分析事例:逆浸透膜の断面TEM観察
逆浸透膜は、排水の再生・再利用や海水の淡水化などに多く活用されている材料の一つです。この逆浸透膜に異なる染色処理を施し、TEM観察した事例について紹介します。逆浸透膜は、ポリスルホン膜の上にスキン層と呼ばれるヒダ状の膜が形成されています。このスキン層の形態に着目する場合は、重金属染色を施した後、超薄切片法によりTEM観察を行います〔図1〕。また、ポリスルホン膜内部の形態に着目する場合は、作製した切片に別の染色剤で処理を施した後(二重染色) 、TEMを用いて観察します〔図2〕。このように様々な染色処理を駆使することにより、スキン層や基材の微細形状を明瞭に確認でき、製品の性能との対比が可能となります。
高分子分析の中で、高分子材料として逆浸透膜に重金属染色処理を施し、断面TEM観察を行った事例をご紹介しました。
高分子材料としてSEBS(スチレン-エチレンブチレン-スチレン)の相分離構造について、重金属染色法による断面TEM観察を行った事例もございます。