導電性フィラーの分散性と導電パスの同一視野観察ができます
導電性樹脂は、絶縁物である樹脂に導電性を付与するために、カーボンブラックや金属粒子,導電性ポリマーなどの導電性フィラーが添加されています。そのため、導電性フィラーの分散性が機能発現のためのキーパラメータであり、分散性を評価することが重要です。一般的に分散性を評価するには電子顕微鏡を用いることが多いですが、今回は走査プローブ顕微鏡(SPM)の中の電気物性モードを使用して、同一視野内で導電性フィラーの分散状態と導電パスを評価した事例を紹介します。なお、用いたモードは静電気力顕微鏡(EFM)とコンダクティブ-AFM(C-AFM)です。
導電性樹脂のEFM/C-AFM同一視野観察
試料は樹脂に導電性ポリマーを分散した系のものです。観察は樹脂表面から行っています。形状像〔図1〕からはスジ状の凹凸が観察されています。同時観察したEFM像〔図2〕からは明るいコントラストで導電性ポリマーの分散状態の可視化ができており、図2右上では導電性ポリマーが凝集傾向にあることがわかりました。また、同一視野の100V印加の電流像〔図3〕から、図3右上の導電性ポリマーが凝集した領域で電流が良く流れており、低抵抗領域であることが明らかとなりました。図4のようにEFM像と電流像を重ね合わせることにより、導電性ポリマー中でどの程度導電粒子が導電に寄与しているのかがわかります。今回の事例では、導電性ポリマーが凝集している場所が比較的低抵抗であり、単独の粒子として存在している箇所は高抵抗あるいは100V印加程度ではほとんど導電に寄与していないということがわかりました。



