最表面(1nm程度)のPFOSおよびPFOA関連物質の有無がわかります
有機フッ素化合物「PFAS」の中でペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)関連物質は、優れた耐熱・耐薬品性を持ち、水や油をはじく特性からさまざまな表面処理の用途に使用されてきましたが、環境や健康等への影響が懸念されています。製品中における上記成分の含有有無については、一般的にはLC/MS分析などで確認しますが、少量サンプルの場合には分析に必要な量を抽出することが困難です。
そこで、各種撥水処理されたフィルム製品について、飛行時間型二次イオン質量分析装置 (TOF-SIMS)でそのまま処理面を評価することによりPFOSおよびPFOA関連物質の有無を調べた事例を紹介します。
撥水処理フィルム表面のTOF-SIMS分析
撥水処理フィルムA、B、Cそれぞれの撥水処理面のTOF-SIMSスペクトルを図2に示します。
その結果、フィルムAからはF由来のピークならびにペルフルオロオクチル基(C8F17)由来のピークが認められ、PFOSおよびPFOA関連物質が含まれることがわかりました。一方、フィルムBからはF由来のピークならびにペルフルオロヘキシル基(C6F13)由来のピークが確認され、C8F17基由来のピークは未検出であったことから、PFOSおよびPFOA関連物質は確認されませんでした。なお、フィルムCではシリコーン成分(PDMS)のみが確認されたことから、PFASを含まない撥水設計であることがわかりました。
本手法を用いることで、抽出や分解等の試料調製をすることなく、PFAS以外にも製品の極表面に存在する成分の組成情報を調べることができます。