超高感度で多核・高温のNMR測定ができます
多核・加温測定ができるクライオプローブに更新しました
クライオプローブは、検出コイルを13 Kという極低温に冷却することでノイズを大幅に低減し超高感度のNMR測定を可能にします。当社では2008年に 1Hおよび 13Cに特化したクライオプローブを導入し、各種化合物の化学構造解析や各種高分子材料の組成分析に活用してきました。今回、分光計およびクライオプローブを一新し、多核および加温測定(<150 ℃)が可能になりました。低感度核である15N核の測定(13C核のさらに約100分の1の感度)や高温溶融下でのポリオレフィンの詳細分析が可能になりましたので紹介します。
末端アミノ基含有化合物の15N NMR分析
末端アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(Mn ~ 2,500)の15N NMR,1H-15N HMBCスペクトルを図1、2に示します。
図1より25 ppm付近に末端アミン由来のピークが観測されました。 本スペクトルは0.4 g/mlの試料を約15時間測定することで得られました。本プローブを用いれば、分子量が2,500程度の化合物が0.5 g程度あり、その分子中に窒素原子が2つ存在すれば15N NMRスペクトルが終夜測定で得られることが確認されました〔図1〕。また、1H-15N HMBC測定は30分程度の短時間で図2のスペクトルが得られ、構造中の窒素原子とアルキル鎖の繋がりを解析することが可能です。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の分岐構造の分析
LLDPEを130 ℃で加熱溶融させ、13C NMR測定(Inverse Gated decoupling 法)を行った結果を図3に示します。試料濃度
60 mg/ml、約1時間の測定で共重合成分の1-ブテンの分岐ユニットを観測することができました。さらに、ピークエリアから
1-ブテン含有量は2 mol%と算出することができました。比較として、当社保有の400 MHzの室温プローブで測定(約5時間積算)を行ったところ、分岐ユニットのピークの検出は困難であり、クライオプローブの威力を確認することができました。