製品に含まれる微量なフッ素系成分の分析が可能です
近年、人体への悪影響の懸念から、各国における有機フッ素系材料の規制の動きが強まっています。これらの含有量について定められている規制値は微量の領域であり、より感度の高い分析が求められています。
ここでは、試料最表面における質量スペクトル情報が取得可能な飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、ハロゲン類の微量定量が可能な燃焼イオンクロマトグラフィー(燃焼IC)を用いて、撥水処理されたフィルム材料〔図1〕最表面の有機F系成分の評価を実施した事例を紹介します。
撥水処理フィルムの表面撥水剤成分の評価
撥水処理フィルムの撥水処理面のTOF-SIMSスペクトルより、フッ素(F)由来のピークならびにペルフルオロヘキシル基(C6F13)由来のピークが確認されました〔図2〕。
本手法を用いることで、1nm厚程度の極表面に存在する成分の組成情報を調べることができます。このため、最表面での成分変化の評価等にも有効です。
TOF-SIMSでは定量的な評価が不可能であるため、撥水処理フィルム中に含まれる全F量について、燃焼ICを用いた定量評価を行いました。その結果、撥水処理フィルムでは、ごくわずかな量のFが確認されました〔図3〕。さらにこれを撥水剤成分に換算したところ、撥水処理フィルムには83μg/g程度の撥水剤成分が含まれていることがわかりました。一方、未処理品は定量下限値未満(<2.4µg/g)となりました〔表1〕。
このように、当社の燃焼ICでは数ppm程度の微量のFについても感度よく定量評価が可能であるため、薄い層でのフッ素コーティング品についても、全F量の定量を実施することができます。また、組成情報がわかっている成分であれば、全F量から有機F系成分の換算値を算出することも可能です。