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-120℃における機械的特性の変化を局所的に評価できます

ゴム材料は、加工の柔軟性や振動/衝撃緩和性、密閉性に優れていることから、宇宙・航空・冷凍輸送・医療などさまざまな分野で使用されています。ただし、温度変化に対して顕著な物性変化を示すため、使用環境に応じた材料の選定や評価が重要です。特に低温環境では、材料の硬化や脆化が懸念されるため、精密な機械的特性の測定が求められます。本事例では、ナノインデンターを用いて、低温環境で2種のゴムの物性変化を評価した事例を紹介します。

シリコーンゴムおよび天然ゴム(NR)の物性変化

ナノインデンター装置内に専用のクライオ設備を設置し〔図1〕、各温度環境におけるシリコーンゴムおよび天然ゴム(NR)の弾性率を測定した結果を図1に示します。シリコーンゴムは、-80℃でもある程度低弾性を維持している一方、NRは-60℃、-80℃で顕著な弾性率の増加が確認されました。シリコーンゴムについては-120℃まで評価を行いましたが、NRの-80℃よりも弾性率が低いことから、柔軟性を維持しやすいと言えます。シリコーンゴムは、C–C結合に比べて回転自由度の高いSi–O結合を主鎖に持ち、さらに側鎖が短いため、低温でも分子運動が妨げられにくく、柔軟性を維持しやすい構造です。一方、NRはC–C結合を主鎖に持ち、さらにC=C(二重結合)を含むことで分子の動きが部分的に制限されます。これにより、低温では分子鎖が整列しやすく結晶化が進み、弾性率が大きく変化すると考えます。

このように、ナノインデンターは低温での機械的特性を評価でき、さらに “局所” や “表層近傍” の評価も可能なため、多層構成の製品状態で、実際の使用環境に合わせた評価を定量的に行うことが可能です。

図1 冷却下でのナノインデンテーション測定結果
図2 冷却測定部の模式図

※ サンプル室を液体窒素を用いて冷やされた窒素ガスで満たすことで、空気中の水分の影響を除外して冷却評価が可能です。温度はサンプル近傍の温度をモニターしながら評価しています。

※ 冷却測定は-120℃まで実施可能です。

その他の応用

  • 冷却環境下における粘接着材料の機械的特性変化を評価
  • 前処理加工を併用して多層材料表面・断面の機械的特性を評価

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