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埋もれた薄層における化学結合状態の違いを判別することができます

製品の多機能化や軽量化が進む中、薄膜設計の重要性はますます高まっています。特に、薄膜の表面や界面における化学結合状態を把握することは、反応メカニズムの解明や製品性能の向上において重要な役割を果たします。光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)は、表面および深さ方向の化学状態分析に広く用いられている手法ですが、元素によっては化学結合状態の識別が難しい場合があることや、分析可能な深さに制約があるといった課題があります。一方、放射光を用いたX線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure:XAFS)測定では、高分解能・高感度な分析が可能であり、XPSでは得にくいより詳細な化学状態情報や局所構造に関する知見を取得することができます。今回、放射光XAFSを用いた有機/無機界面における化学状態解析の事例について紹介します。

金属/樹脂界面におけるシランカップリング剤Siの化学状態解析

樹脂フィルムと金属板をシランカップリング剤により接着した試料において、接着不良が発生しました。そこで、樹脂/金属界面におけるSiの化学状態を明らかにすることを目的として、Si-K吸収端XAFS測定を実施しました。樹脂層は数十μm程度の厚みを有しており、試料をそのまま測定した場合、界面に限定した化学状態解析は困難です。そこで、樹脂/金属界面から数μm手前までの精密加工を行い、接着状態を保持したまま界面近傍を測定可能な位置まで露出させることで、界面分析を実現しました〔図1〕 。XAFS測定の結果、正常部ではシランカップリング剤由来のSiが主として3官能状態で存在しているのに対し、不良部では2官能状態と3官能状態が混在していることが示唆されました〔図2〕。一般的に、シランカップリング剤は3官能シリコーンとして検出されますがこのシランカップリング剤の3官能状態から2官能状態へ変化するためには、超高温条件や強酸・強塩基環境が必要とされています。本接着工程条件はこれらに該当しないことから、工程中にシランカップリング剤自体が化学的に変質した可能性は低いと考えられます。以上の結果を踏まえ、不良部で確認された2官能のシリコーンは、工程外から持ち込まれた外部由来シリコーンによるコンタミネーションである可能性が高く、これが接着不良の原因になったと推察されました。

図1 分析概要の模式図
図2 Si K吸収端のXAFSスペクトル(部分蛍光収量法)

その他の応用

・波形分離による化学状態の比率計算

・接着に起因する化学結合状態の評価

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